夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「からかわないでくださいっ。私は火遊びする気はありません」
自分自身に言い聞かせるつもりで、彼から目を逸らした。すると伸びてきた手が、私の左手にそっと重ねられる。
「ひゃっ」
引っ込めようとしたら握られた。ヤバい。心臓がバクバクでおかしくなってきた。
「俺も、火遊びで済ますつもりはない」
握る手にグッと力を込められる。熱い。手も、顔も、息も。
「あ、あのっ」
「結婚を前提に付き合ってくれないか。婚活で会ったどの男よりもきみを幸せにすると保証する。後悔はさせない」
酔いが一瞬で吹き飛び、頭は真っ白になった。マスターの驚き具合を信じるならば、彼は普段こんなことを言い出す人ではないのかもしれない。本気の告白、ということ? 私に?
「……どうして、私なんかを?」
そう聞くのが精一杯だ。ドッキリなら誰か早く種明かしのプラカードを持ってきて。
「私〝なんか〟? 賢くておもしろくておまけに美人。最高じゃないか。今まで男に恵まれなかっただけだ。可哀想に」