夫婦未満ですが、子作りすることになりました
午前十一時。零士さんには私の自宅に迎えにきてもらうことになっていたが、こんな気持ちでうちの親には紹介できそうになく、直前で待ち合わせ場所を最寄り駅に変更してもらった。
時間に余裕を持ってロータリーのそばの歩道に立って待つ。
「お姉さん」
茶髪に革ジャンの派手な男性がこちらへ近づいてきた。
「はい。私ですか?」
「うん。誰待ち?」
馴れ馴れしく隣に立たれ、体がくっつくほど距離を詰められる。なんの用だろう。
「ええと、婚約者を」
真面目に答えたつもりだが、男性はブハッと大袈裟に吹き出した。
「お姉さんおもしろいね。じゃあさ、ここらへんにホテルない? 俺、土地勘なくてさ。案内してもらいたいんだけど」
観光かな。きっと地図が読めないのだろう。気の毒だから手助けするべきだ。案内はできないが、私は快く引き受けてスマホの地図アプリを開いた。