夫婦未満ですが、子作りすることになりました
黒いジャケット姿の零士さんの腕の中にいた。私がこちらに動いたせいで反対の肩に寄りかかっていた茶髪の男性がカクッとバランスを崩し、「おいなんだよアンタ」と文句を言っている。
「彼女に馴れ馴れしく触るな」
零士さんは私を抱きしめ、男性を睨みつけながらそう言った。男性は「マジで男待ちかよ」とばつが悪そうにつぶやくと、地面に唾を吐いてその場を去った。なんて人。
私は抱かれているこの状況にハッとし、恥ずかしくて腕から逃れた。
「零士さんこんにちは。お車は?」
「そんなことより、ああいうのは相手にするなよ。危ないだろ」
両肩を引き寄せられ、彼はしっかりと視線を合わせてきた。真剣な瞳にドキッと胸が鳴る。
「危ない人ではありませんでしたよ。土地勘がないと相談されたので、ホテルまで道案内をするところだったんです」
「凛子……」
目を細めた彼は険しかった顔を困った顔へと変化させ、大きくため息をついた。