夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「これどういうこと?」

「発達の遅れが気になってね、いくつか病院に行ったのよ。様子を見ようってことになるばかりで診断がつかなかったから不安で不安で。凛子はなにか障害があるんじゃないかって」

まさか、普通に育ってきた私にそんな不安があったなんて。〝障害〟という言葉が今まで頭になかった私は、それを肌で感じて戸惑った。

「もしそうだったら、私はこうならなかったかもしれないよね。そしたらお母さんはどうするつもりだったの? 研究者一家って言われてるこの家で、そうなれない子が産まれたら」

「そんなのどうでもいいわよ。どんな子でも、親はその子の人生をよりよくする手助けをしていくだけ。それしかできないんだから。こっちで勝手な理想を思い描いてたってお互いに苦しむだけよ」

母とこんな話をするのは初めてだ。今までは、私の中には春川家の優秀な遺伝子があると思っていた。でもそれはたくさんのうちのひとつでしかなくて、この遺伝子の大半は、父と母の愛でできているのかもしれない。
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