夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「なに、あんた泣いてるの? 凛子」

ポロポロと涙があふれてきた。だってあまりに違いすぎるから。私は甘く考えていた。お腹に宿った子どもがもし、零士さんやご両親が望んでいるような優秀な子ではなかったら。跡継ぎになれなかったら。

私は、その子をどんなに傷つけることになるだろう。

「……お母さん。私は母親にはなれない。その資格がない」

ポンポン、と背中を叩かれる。

「あら親になる資格なんてどこで取れるの? 大丈夫よ、こんな話でビビって泣いちゃうなら。よく考えてるってことだもの。……で、凛子はどうしてそんなに悩んでるの? 妊娠、したの?」

「ううん。まだでよかった」

「よかったって、あんた……」

「大丈夫。お母さんのおかげでいろいろ決心ついたよ。ありがとう」

爽やかな言葉とは裏腹に、私は涙が止まらなかった。母はさすがに「凛子」と心配そうに声をかけてくれるが、本当に、これでいいと思う。

零士さんと結婚するべきじゃない。私は跡継ぎとか関係なく我が子を愛したい。大切なのは優秀な遺伝子ではなくて、愛。私はそう思う。
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