夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「私、愛のない結婚はできません。妊娠すれば繋ぎ止められるなんて浅はかな考えを持ったけど、間違っていました」
「待ってくれ。愛はないって、凛子が……?」
「私にはありました。優しくて尊重してくれる零士さんが好きでした」
「俺だって好きだ!」
彼はいきなり身をのりだし、ガラスのテーブルが音を立てた。母は私と彼を見比べて「あらあら」と他人事であるが、零士さんは収まらない。
「すみませんお母さん。凛子、ちょっとふたりで話さないか」
「ふたりで話したら流されてしまう気がするんです。私は好きだから。でもダメなんです。優秀な遺伝子が目当ての結婚なんて、私はできない。どんな子でも愛して育てたい。零士さんの期待には応えられません」
早口で訴えるうち、零士さんの顔はどんどん険しくなっていく。母も「凛子」と私の話を止めようとするが、どうにも止められない。