夫婦未満ですが、子作りすることになりました
とてつもなく素晴らしい門構えの家にやってきた。お母様の出迎えを受けて何十畳あるのという洋風のリビングに通されると、先ほどの電話のとおり、若葉さんがいた。零士さんはどうして彼女を待たせたんだろう。
しまった、若葉さんはまた素敵なノースリーブのワンピースを着ているのに、今日の私は三千円のチェックワンピース。別れ話で終わる予定だったからお洒落をしなかったのだ。なんだかすでに負けている。……張り合ってもしかたないけど。
「若葉。久しぶりだな」
私を若葉さんから離れた奥に座らせ、隣に零士さんも座る。お母様はお誕生日席。私はどうしていいかわからず下を向いていた。
「久しぶりじゃないです。何度もお家を訪ねているのに、零士さん居留守してるでしょう!」
「同じ話を何度もしに来るのが悪い。俺には婚約者がいるから若葉とは結婚できないって」
「誰ですか!? まさか、さっきから隣にいるその人じゃないでしょうね!」
睨まれ、ゴクンと息を飲んだ。子猫のようだがとても攻撃的で、ひっかかれそうだ。
「そうだよ。若葉も話したことがあるはずだ」
え? ない。ないよ。