夫婦未満ですが、子作りすることになりました
これにはお母様も首をかしげている。私はプルプルと首を横に振った。若葉さんがじっと私を見て思い出そうとしているが、私はこんな素敵なお嬢様とは関わることなく生きてきたはず。
「凛子は? 若葉のこと覚えてない?」
だから覚えてないって!
すると、若葉さんの表情が変わった。
「……凛子? って、まさか……春川凛子さん?」
「えっ? そうです、けど」
どうして知ってるの? 私は若葉さんからいったん目を外し、零士さんを見た。彼はうなずいている。
混乱してそれ以上なにも言えずにいたが、テーブルを挟んだ向こうにいたはずの若葉さんはこちらへ移動し、なんと零士さんとは反対側の、私の隣へやってきた。
「凛子さん! あのときはありがとうございました!」
「……え?」
そして彼女は思いきり、私に抱きついたのである。