シニアトポスト
「お待たせ」
「…ありがとうございます」
コト…と目の前にマグカップが置かれた。私は外に向けていた視線をもどし、淹れてもらったばかりの珈琲を見つめた。
白い湯気が立ち、真っ黒な珈琲の水面に私映っている。
本当にそっくりだ、顔だけは。
莉乃はもういないというのに、ふとした時にどうしても思い出してしまう。
この顔に生まれなかったら。双子じゃなかったら。
そしたら私は、もっと気楽に生きていただろうか。
「…おや?」
珈琲に手を伸ばし、ひとくち口をつけたとき、マスターがそんな声を洩らした。ほとんど反射的に顔を上げるとマスターの双眸に捕らわれる。
「君は…もしかして1度、この店に来たことがあるかい?」
「え?」
「…いや。なんだか見たことあるような気がしてね。…その時も同じくらい暗い顔をしていた記憶があるんだ」
「勘違いかもしれないから、あまり言うのはやめておこう」と言いながら、マスターはちゃっかり自分の分の珈琲を淹れている。
コポコポ…と、カップに珈琲が注がれている音。静かな店内には、それが十分すぎるくらいに響いていた。