シニアトポスト





死後の世界に手紙を届けてくれるポスト。
またの名を───シニアトポスト、と言うらしい。



「ついこの間、ここに翼くんが来たんだ」

「…翼…、くん?」

「君の───…莉乃ちゃんの恋人さ」




まさか、過去に1度来たことがあるだけの喫茶店でその名前を聞くとは思っていなかった。



莉乃の恋人───橋下翼くん。



翼くんとは莉乃のお葬式の時以来会ってはいない。

怖かったのだ。非難されてもおかしくないと分かっていても、かつて恋をした相手に私の行動や言動、存在を否定されてしまっては、きっと私は苦しくて耐えきれなくて、“私らしい”生き方を忘れてしまうかもしれないと思っていたから。

お葬式の日を最後に彼への恋心は完全に封印したつもりでいたし、連絡も一切取り合っていなかった。



彼は今、莉乃のいない世界でどうやって生きているんだろうか。




「翼くん、そのポストに手紙を出しに来たんだよ」

「…、翼くんが、ですか」

「そうさ。来た時よりもずっとスッキリした顔で帰っていったよ」




「まぁ、もう私は彼と会うことはできないんだがね」と付け足したマスターの言葉も気になったけれど、それよりも、“シニアトポスト”とやらに翼くんが手紙を出しに来たという事実がなんだか意外で気をとられてしまった。



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