紅一点
 

「“城跡”ってのは、
昔のお城の跡よ。」

「知ってるわよ。城はアソコで
絶賛営業中じゃないのよ。
井戸の横穴って、
胡散臭いわね。じゃあ、アンタ
どこから出てきたのよ?」

そんな事を言いながら、
コーヒーをいれてくれる。

…おお…珍しい。

漸く、一通り合理的に
物事を判断できる人物に
出会えたようだ。

…それはそれとして…

できれば、ミルク等
頂きたいのだが…

この店、…砂糖もミルクも
置いてないんだな。

「いただきます。」

出されたモノに
手をつけない訳にいかず
苦味を覚悟して、一口ふくむ。

「わぁ…おいしい…」

苦味も酸味も無いコーヒーで
とても美味しい…
こんなの、初めて飲むと、
驚いていれば。

「あら、お褒め頂き光栄ね。
…っで?横穴を這って
きたってんなら、出口が
あったんでしょ?このあたりに。」

“アンタ泥まみれね”
そう言って、オネエは、
私の頬をおしぼりで拭う。

…意外だ。
おしぼりは、温かかった。

「信じないだろうけど…
前の道にあるマンホールから
出てきた。」

どうせ信じないのだろうと
唇を尖らせ、ボソボソ応える。

「あら。雨水用の水路で
よかったじゃない。
これ、珍しく余ったから、
お食べなさいな。」

そういいながら、目の前に
置いてくれたのは、
フォーク&ナイフと
…桜餅だった。

“…まぁ…汚水用だったら、
あの潔癖症が
拾うはず無いわないわよね”
なんていいながら。

…イマイチ、ここの世界観が
分からない…


  
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