紅一点
 

「出せ!!」

“…ホントに、出されても
困るけどな!…”等と
のたまいつつ、
リサイクルショップの
店主である重蔵が
更に指に力をこめる。

…これは、本気で
抗わないと
いけないだろうか…?

臨戦態勢に入りかけた
その時

大きくて派手な背中が
目の前に立ちふさがった。

「止めて。重蔵。
この子は私が池田屋から
身請けしたんだから。
諸々確かめたい事もあるし
重蔵は、手出ししないで頂戴。」

…デカイ…

「だけど!!淳之介!!」

…えらく食い下がるな。
リサイクル屋。

「大丈夫。重蔵も
気づいたでしょ?
だからこそ、女の子に
手をあげたんでしょ?

ハオは、使える子よ。
上玉よ。」

‘’ハオ”って、何?

「はお?」

目の前の重蔵も、
わからない様だ。

「この子の愛称よ。ハオ。
可愛いでしょ。」

そう言って、淳之介は
私の頭を掌でポンポンする。

…うん。悪くないぞ。
今日から、私はハオだ。

「…ハオねぇ…。
っで?そのハオの負債は
淳之介が被んのかい?しかも、
青年後見人のいる様な年でも
あるまいよ?」 

…見た目に反して
経営者だけある。

「…難しい言葉知ってる…」

思わず呟けば。

「知ってるよ!!っつうか
テメェ、俺を何だと
思ってんだよ!?」

淳之介を挟み、シャーっと
全身の逆毛を立て優男が
私を捕まえようと、
手を伸ばしてくる。

「淳之介。コイツ、やだ。」

着流しの袖をギュッとつかんで
その背中に隠れて、舌をだす。

「ハオ、大丈夫よ。アンタは、
私が守ってあげるんだから。
心配しなくていいわ。」

そういって、こちらを振り返り
腕の中に私を抱きとった淳之介を
重蔵は、驚愕といった表情で
見ていたのだった。


 
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