紅一点
 

「もう。太夫もハオも
何をしているのかと思えば。」 

なかなか支度に現れない
太夫を急かしに来た
池田屋さんが見たのは、
壁にへばりつき、街路の
様子を伺う太夫と私の姿
だった。

…何だか腹が立ったのだ。

ヒトの弱みにつけこみ
巻き上げた金で、ギラギラしながら
遊郭へ繰り出すヤツらの姿に。
何か制裁を加えないと
気が済まなくなってしまった。

そんな経緯を話せば
池田屋の姐さんが
右手の人差し指と中指を
顎に添えて、思惑するよう
私に問うた。

「ハオ、あんた達の心が
騒めくのはわかるけど。
あんた達のリベンジだけって
つもりでも、事が大きく及べば、
この世界が根底から覆る事に
なりかねなくってよ?」

…池田屋の姐さんの言い分は
ごもっともデス。

それは、わかるのだけれども!

「取り敢えず、私への慰謝料として
身ぐるみ剥がして、奴らの
有金全部頂きたい。」

それ位はしないと
気が済まないのだ。

何度考えても
やられっぱなしは
腹立つ!

「そして、アイツらを老化させて
二度とこの世界に来れなく
してやりたい。」

思いの丈をゲロすれば

「身ぐるみ剥ぐというのは
面白そうね。歓喜させたあとに
地獄に突き落としてやるのも
悪くないわぁ♪」

池田屋さんは、そう言って
お人形みたいな
綺麗な表情でウットリと
したのだった。

 
 
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