紅一点
 

トドメに行燈の灯りに艶めく
首筋の唾液のあとを
吸い上げた。

溢れる吐息

…ヤバい。
ほどほどにしないと、
止まらなくなる
気がする…

そんなこちらの
思惑など、知っちゃ
いないんだろうハオは

「えー。これから他の
花魁も合流すんのに
いーやーだー。」

腕の中で、もがいて
抵抗している。

「バカね。そんなんじゃ
姐さん達が来る頃には
アンタは寝落ちしてるわよ。」

暴れるハオを羽交締めにして
なだめていれば、また一人
面倒くさいオンナが
千鳥足で寄ってくる。

コイツら、何時から
呑んでんだよ!?

「あら、淳之介じゃない。
なにしてんの?
ハオなら明日帰すって
男衆を遣いに出したでしょ。」

…池田屋…アンタまで
何を気持ちよく酔ってんの?!

そもそも…遣いなんて
来てねぇし!!
遊郭に年頃の娘を
預けるとでも?!

遊女(プロ)と間違えられたら
どうするっ?そもそも
この奔放娘(ハオ)が、大人しく
客の相手をするとは
到底、思えない。

何なら一騒動起こして、
池田屋から、高額な
請求書の束を押し付け
られるのが関の山!

「朝までなんて危なくて
置いていけないわよ!」

ムッとして答えれば

「このバカ息子ゎ!!
散々、お座敷遊びをしてからに
遊女をバカにすんな!」

酔っ払った太夫に
背後から首筋を腕で
ロックされる。

「うげっ」

苦しい!!ヤベェ
バック取られた!!

この太夫が、この長らく
諸々負けなしで
この地位に収まっているのは
アッチのテクニックに勝る
剛腕に因るものだ。

俺は、この太夫が
女の死闘で負けるのを
見たことがない。


 
 
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