紅一点
 

「ぐるじぃ!
バカにしてないわよ!
アタシは、ハオが暴れて
請求書を持って帰ってくる
夜明けが怖いのよ!」

ここぞとばかりに
太夫に内心をぶちまければ

“あら、さもありなん…”
なんてクスクス笑って
腕を解いてくれた。

ヤベェ…三途の川見えた!
なんか河原に石積んでた!
ピラミッド積んでた!

「しかしまぁ…本当に
旦那が誰かの保護者になる
だなんてねぇ。」
 
こんな騒ぎの最中
寝落ちしたハオの額に
御猪口を置いて、太夫は
感慨深げに感無量だという。

「なんだ、それ。」

なんだか色々知られて
いるだけに、居心地が悪い。

「不照れ臭れてんじゃ
ないわよ。
コレでも安心してんのよ。

私らは大した責任感も持たず、
珍しくて可愛いからって
ちんまい子を、アイドル宜しく
チヤホヤ育てしまったからね。」

「ふん。しつけの悪い
ペットみたく言わないでよ。
元より恨んでなんか無いわよ。
感謝こそすれ…」

…そう。感謝してるわよ。

池田屋が連れ帰った
捨て子を、姐さん達が
自分の稼ぎで養ってくれてった
アタシ知っているもの。

並々と酒が注がれた
おちょこを口元に運んだ。

「池田屋?」

隣で畳に寝そべって
足をぶらぶら遊ばせながら
相もかわらず通信端末を
弄っていた池田屋が
突然、正気を取り戻した。

「さて、私は行くわ。
今日はお開きよ。
イイコト閃いたわ。」

そう言ってムクっと
起き上がると

「朝イチでダーリンの所に
集合よ。太夫も手伝ってね。
また明日。」

そう言い残して
池田屋は退場して行った。

…また何か思いついたな… 

…イヤな予感しか
しないんだけど。


 
 
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