紅一点
アレをマスターキーと
呼ぶとは…そのセンス
もはや、盗人!
部活用のジャージの上から
淳之介が用意してくれた
一見シンプルな黒地だけど
裏地に凝った龍の刺繍が
施された着物を羽織る。
…というか、見ているうちに
表裏もわからなくなった。
「…着方がわかんない…。」
とりあえず、淳之介も
池田屋のお姉さんも、
ブローカーも、着物は
羽織っただけだったよね。
きっとそれは、こっちの
着方なんだよね。
帯なんて、更に意味不明。
「でも、まぁ…自分らしく
着ればいいか。」
とりあえず、羽織った着物の
裾を踏まない様に
腰で結えて部屋を後にした。
「ハオ。おはよう。」
淳之介が笑顔で迎えてくれる。
そして、私の頭の先から
つま先までを、二度見三度見し
驚いたように言葉を紡いだ。
「…随分、個性的な着方を
するわね。それとも着方が
わからなかった?
でもまぁ、似合っているし、
いいかしらね。」
「こいつ、袖が邪魔なんじゃ
ねーの?…つーか、コレ…
淳之介のだろ?オンナにしちゃ
タッパはあるが、さすがに
これじゃあ裾が不細工だ。」
雅也も私をクルクル
回転させながら言う。
「雅也!お前はハオに触るな。
ハオが妊娠するだろう! 」
淳之介が不愉快そうに
雅也の手を払うが
…いや…
それは無理だと思う。