紅一点
   
「後で、着物の事は池田屋に
頼むとして、まずは、
朝ごはんを食べながら
詳しいことを聞きましょうか。
ハオ、お座んなさいな。」

私の着物の袖を、
たすき掛けにしながら、
淳之介がそういった。

「淳之介、俺の分は? 」

雅也がいじけた様に問う。

「は?ないけど?
それが何か? 」

そうだ、そうだ。
テメェは、家で食べて来い。
声に出さず悪態をつけば。

「おい、小娘!お前、
今心の中で悪口いっただろ。」

「っ痛て!」

スナップを利かせた
攻撃が額に加わり、思わず
声を漏らした。

それにしても…
相変わらず、和食に
フォークとナイフだなんて(笑)
微妙なギャップに笑ってしまう。

私と淳之介の食事風景を
眺めながら、尋問をしていた
雅也が溜息混じりに呟いた。

「じゃあ、…異世界から
来たっていうのか?
アタマ大丈夫か、オマエ?
しかも、そこのマンホールが
異世界の入口で、既に
一度、盗品を捨てに戻ったって
いうのか?」

…だから、昨日から、何回も
そう言っているじゃない。
全然、話が前進しないんですけど!

…ちうか…コイツ…

「淳之介、コイツ何者?」

思わず、不信感満載の表情で
問い質せば。

「ああ。彼は、
九鬼雅也ってゆってね。
弁護士なのよ。
知ってる?弁護士って。」

「うん。」

その職業は知っている。
法律に照らして、
罪人の刑を軽くして
報酬を得たりする人でしょ。

…私、そいつら、
信用してないのよ。


 

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