紅一点
   

「…つぅーか、何回
同じ事聞くわけ?」

もう、いい加減飽きて来て
溜息混じりに本音を
吐き出せば。

「黙れ、罪人。
俺は、お前の弁護人じゃ
ねぇーよ。重蔵んとこの
顧問弁護士の立場で
訴訟するか聞いてんだよ。」

私に負けず劣らず、
口の悪い弁護士が毒を吐く。

「分かってるっつーの。
そんなの。だいたい
高校生に弁護士雇う金
ある訳ないでしょうが。」

売り言葉に買い言葉とは
上手く言ったものだ。

食後のお茶を頂きながら
そう吐露すれば、私達の話を
聞いていた淳之介が
深い溜息をつき言う。

「やめなさい。二人とも。
雅也も重蔵も、そんなに
ハオを疑うんなら、そこの
マンホールから来たって
言うんだし、見に行けば
いいじゃないの?」

…淳之介は、
そういうけれど…

多分、それは、
厳しいと思う。

「面倒くせぇよ。俺は、
コイツの進退に興味なんぞ
ねぇよ。奉行に引き渡すか、
判断するだけだ。」

「身体の負担を考えれば、
あっちにいくのは、
止めておいた方がいいよ。
きっと。」

そう溢せば、弁護士が
鼻で嗤う。

「やっぱ、嘘なんだろ、
異世界なんて。」

そうじゃない。
私は、向こうから来たから、
今のところ大した不便は
ないけど。

「重力が違うんだ。
こっちより、ムコウの方が
断然負担が大きい。」

「…なんだと?」

雅也が眉間を
ピクリと動かした。


  
 
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