紅一点
 
禿の手を引き、淳之介の後に
続いた。途中で、藤姫の空間を
振り返る。

藤姫、あとは任せたぞ。
ボコボコにしてやってくれ。

こちら見ていたであろう藤姫と
目が合った。
どこで仕入れてきたのか
サッと敬礼をしてきたので、
私もそれに応えた。

その後は淳之介のお店に戻り
禿と3人で甘味を食べた。
いつもは、先輩女郎のお使いで
お小遣いをもらった時しか
食べられないという甘味に
瞳をキラキラさせていた。

今は私の部屋で
ジャージを着て眠っている。
ぶかぶかワンピース状態の上着が
噂に聞くカレ服の様で
誠に可愛い。

学校指定ジャージの
3年B組が気になるらしく
やたらと聞いてくるので
池田屋みたいな屋号だと
適当に説明しておいた。

いつか、たばこケースを
蹴やった技を教えると
約束をした後、
彼女は眠りについた。
ぐっすり眠った所で
自分の部屋の扉を閉めた。

「いま、寝たよ。」

リビングで待ってた
淳之介に告げる。

「そう。禿は落ち着いた?」

いつもの様子に戻った
淳之介が聞いて来た。

「うん。多分当分起きないと
思うよ。よく寝てる。」

「うん。」

気まずそうに一言応えて
淳之介は湯呑みをグッと煽った。

「淳之介?」

「…えーっと…。
ここもなんだし…アタシの部屋へ
行きましょうか。」

促されるまま
淳之介の部屋へ入る。

一緒に住んでるけど
当然ながら、あんまり
入ったことないんだよね。


 
 
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