紅一点
 
 
伸ばした手はーーーー

「もういい。
ハオ、お前は俺と来い。
全部自分で片をつける
必要なんてない。
みんなを頼ればいい。」

そんな淳之介の声と共に
大きな掌に止められた。

「でも!」

こんな中途半端な所で
止めるなんて、コイツらの
やってきた事に対して
自分の気持ちだって
収まらないのだ。

「ハオ。ここは、引いて頂戴な。
私に任せてちょうだい?
私が取り仕切る店で起きた事態は
当主たる者が片をつける。
それがスジというものよ。」

池田屋さんに
そう言われてしまえば
ご尤もで、反論もでない。

「お嬢のいう通りだ。
悪いようにしねえよ。
それより淳之介連れて
戻ってな。見てみろよ。
ひどいツラしやがって。」

雅也も背中を押すよう促す。
最後は淳之介に向けて
言い放ち苦笑する。

「ハオ。ここの規範は、
オマエが思ってるより
ずっと厳しいよ。
心配せずとも甘い結果には
ならない。
アイツらの処遇なんかより、
禿に甘いものでも
食わせてやって労ってくれ。
怖かっただろうからな。」

重蔵が禿の手を引き
やってくる。

「いや、私を1円で売り捌いた
アンタがそれを言う!?」

思わず毒を吐いてしまったけど。

「…ハオちゃん、行こう。」

禿の小さな掌に指先を握られ
グッとくる。
瞳は涙で潤んでいる。
こんなの…きっと、向こうじゃ
小学校入りたてくらいだよ。

…今は、自分に出来る事を
するのが最善だな。


 
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