紅一点
 
「危ないことはしないでほしい。
毎日ここにいて欲しい。
重蔵や雅也にも
スキを見せないで欲しい。

今までだってアタシ、
一杯、アンタに言いたかった。

ハオは、ちょっと変わった育ちの
アタシにも優しいけど、
それは、雅也や重蔵にも同じで
特別じゃない。

アタシ達は一緒に居るのに
2人と同じなのはイヤだ。

でも…
ああ…そうか…」

淳之介は溢れ出す様に
言葉を紡いでいたけれど、
急に腑に落ちた様に
口元を指先で覆った。

「そうか…
そうなのか…これが…」

そう呟いた淳之介は
何とも言えない笑を浮かべた。

「どうしたの?淳之介。」

「やっとわかったんだ。
これが何なのか。
この感情がどこからくるのか。」

両手で頬を抑える仕草と
その声と言葉遣いが
アンマッチで笑いそうに
なるけれど。

最近、私も気づいた。

淳之介は、喜怒哀楽や
心が動くとき、
感情が溢れ出る時、
本能が理性を超えて動く時は
オトコっぽくなる。

だから、今もきっと
ちょっと自分に手が一杯
なんだろう。

「何がわかったの?」

そう問えば。

「これが、“恋慕”ってヤツだ。
自分を見て欲しい。
他と一緒は嫌だ。
池田屋の女郎達が言ってた感情。」


 
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