強引な彼にすっかり振り回されています
約束の朝、5:30。
私は高級レジデンスのエントランスに来ていた。
ーー スポーツウェア姿で。
「おはよ。朝から悪いね。」
長身の彼は羽織ったジャージですらカッコよく着こなし爽やかな笑顔で迎えてくれる。
こっち、と案内されエントランスホールを反対側に抜けると。
「うわぁ!こんな感じだったんだ……。」
レジデンス内の広場も親方が請け負っているものの、
レジデンス管理企業との取引は担当者が別にいるので、私がここを実際に見るのは初めてだった。
朝日を浴びて活き活きとした緑が風に揺れる景色は、私の意識を全て持っていくほどの生命力に溢れていて、
無意識に目を瞑り深呼吸したところで笑いを含んだ声が落ちてきた。
「満喫しているところ悪いけど、そろそろ行こうか。」
「あっ!ごっ、ごめんなさいっ!行きましょう!」
「いい顔するね。」
またしてもさらりと恥ずかしくなるようなセリフを残して、西王寺さんが走りだしたのを慌てて追いかける。
一昨日の車内で言われたのは、朝のジョギング中に打ち合わせしようというものだった。
「紗也ちゃんは、植物好きで今の仕事に?」
「はい!植物からもらえるパワーとか、優しさが好きで。」
「好きを仕事にできるっていいね。それでこその責任感……か。」
「まぁ……そのおかげで今、ジョギングしているわけですけど?」
ちょっと嫌味を込めて言ってみる。
どんな反応をするか、チラリと横目に見ると
面白がっているような顔でこちらを見ていた。
「いいね。もうちょっと速度上げてみようか。」
「えっ……?」
言うや否や、さんが速度を上げた。
「ちょっ……ちょっとっ!」
慌てて西王寺さんを追いかける。
何となくむず痒く感じる雰囲気は嫌じゃなかった。