強引な彼にすっかり振り回されています
「おつかれさま紗也ちゃん。良くおれの速度についてきたね。」
そろそろ時間切れと言いだした西王寺さんが、エントランスまでもう少しのところでクールダウンのために歩き始める。
「おれの速度だなんてっ……、私に合わせてくださったんじゃないですかっ?」
ただでさえリーチの差がある上に、息の上がっている私に比べて西王寺さんは余裕なのだから、明らかに1人の時の速度とは違うのだろうと思う。
「さぁ?どうかな。」
ニッと意地悪な笑顔が見えたのと同時に、こちらに手が伸びてきた。
「汗、目に入りそう。」
おでこの辺りをタオルで拭われる。
さわやかなタオルの香りがふわり、突然の出来事に思考が停止してしまう。
「あっ……ありがとうっ……ございますっ?」
「どーいたしまして。」
何事も無かったかの如く先に歩き出してしまった西王寺さんと私の間を強い風が通り過ぎて、
葉の揺れるざわめきが耳に触れた。
(落ち着け、私っ!)
心のざわめきを木々が奏でる音のせいにしたくて、深呼吸してから大きく見える背中を追った。