婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
『紅は自信がないっていつも言うけど、私の親友はいい女だよ。大変なことたくさんあったのに、文句ひとつ言わずにきちんと生きてる。お嬢様だった頃も今も、紅は変わらずかっこいいよ!』
「ありがとう……玲子」
『つりあわなくなんかない。宗介さんと紅、すごくお似合いだよ。紅の一番好きな人と幸せになってよ』

 一番好きな人……思い浮かぶのは彼だけだ。優しい笑顔も、優しいだけでない策士なところも、宗介の見せるどんな顔も紅は好きだった。

「玲子。私、決めた。今から宗くんにプロポーズしてくる!」

 いまさらどんな顔で……とは自分でも思うが、それは誠心誠意の謝罪をして、改めて紅のほうから結婚を申し込もう。
 受け身の自分は脱ぎ捨てて、生まれ変わりたい。心からそう思った。

 玲子に礼を言って電話を切ったあと、紅はすぐさま机の引き出しを開けた。そこには宗介から贈られた二つの指輪が眠っていた。

(めいいっぱいオシャレをしよう。この指輪が似合う素敵な女性になって、それで宗くんに気持ちを伝えるんだ)

 宗介にはメッセージを送った。

【うちの近くの、あの公園で待ってます。遅くなっても構わないよ。来てくれるまでずっと待ってるから】

 こう言えば心配性な彼は必ず来てくれるだろう。卑怯かも知れないが、この際、手段は選んでいられない。
 莉子に取られてしまう前に、宗介に気持ちを伝えなければ。















 
 


 
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