婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「一応、栄転よ」

 莉子は自慢げにふふんと笑ってみせた。麻子同様にワガママなお嬢様ではあるが、仕事はできるようだった。

「それはおめでとう。で。俺と暮らすってのはなんなんだ?」
「結婚しましょうよ。日本の法律ではイトコの結婚はOKでしょ」

 莉子はけろりと、とんでもないことを言ってのけた。宗介はしばし言葉を失った。
 
 宗介にとって、彼女は親戚だ。それ以上でも以下でもない。当然、恋愛感情なんて欠片も抱いたことはない。それは莉子のほうも同じだと思っていた。

「莉子はあっちで結婚するもんだと思ってたけど」

 彼女の性格的にもそれが合うように思う。莉子は英国帰りらしいオーバーリアクションで肩をすくめてみせた。

「そのつもりだったんだけどね。宗介みたいないい男は見つからなかった。日本ではもっと見つからなそうだし……」
「俺は、そんな気は一切ないよ」

 宗介ははっきりと主張した。彼女は遠まわしな表現は好まない。宗介の反応は想定済みだったようで、彼女はショックを受けたりはしなかった。むしろ余裕の笑みで宗介の首筋に腕を回した。

「これから、その気になればいいじゃない」
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