婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
 宗介はすぐさま彼女の手を払いのけた。

「ならない。婚約者がいる。それは知ってるはずだろ?」

 莉子と紅に面識はないが、宗介に婚約者がいることは莉子も承知だったはずだ。手を振り払われたことは、それなりにショックだったらしい。彼女は悔しそうな顔で、ふんと笑った。

「子どもの頃のかわいいお約束でしょ。麻子おば様も強制するつもりはないって言ってたわよ」
「強制されてるからじゃない。俺が、自分の意志で、彼女と結婚したいんだよ」
「だって宮松は潰れちゃったんでしょ。なら、なんの意味もないじゃない」
「宮松は関係ない」

 これ以上、彼女と話を続ける気はない。宗介はテーブルの伝票をつかみ、立ち上がった。

「うちにくるんだろ? 送るから早くして」

 莉子の両親は、現在は米国暮らしだ。彼女は日本に帰ってきたときは、いつも宗介の実家に滞在している。莉子はバッグを手に、あわてて宗介の後を追った。

「もうっ。まだ話の途中じゃないの。よく考えてよね、私と結婚したほうが絶対あなたのためになるから」

 先程までの余裕の表情はどこへやら、宗介のあからさまな拒絶に腹がたったのか、莉子の口調はいらだっていた。















 


 

 




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