婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
 実家を出て車に乗りこむタイミングで、ようやく紅からメッセージが届いていたことに気がついた。

「……公園って」

 宗介は左手首に巻かれた腕時計を見やる。時刻は午後十時をとうに過ぎていた。

「危ないだろ!」

 手にしたスマホに向かって、思わず叫んでしまった。

 あの公園は夜遅くまでそれなりに人出はある。が、若い女性ひとりではどんな危険があるかわかったもんじゃない。
 宗介はすぐに紅に電話をかけた。公園ではなく部屋で待つよう伝えるためだ。
 だが、どれだけ発信音を鳴らし続けても紅の応答はない。

 宗介はスマホを後部座席に乱暴に放り投げると、ハンドルを握り、強めにアクセルを踏み込んだ。
 いつもは安全運転を心がけている彼だったが、今夜ばかりはかなり飛ばした。

 紅の指定した公園に到着すると、乗り捨てるように車を降りて走り出した。
 息を切らせながら、彼女の姿を探す。

「紅っ」

 つい先日、ふたりで美しい月を見上げたその場所に彼女はいた。
 宗介は走ってきた勢いそのままに、彼女を強く抱き寄せた。

「宗くんっ。早いね、びっくり……」
「バカ! こんな時間にひとりで、危ないだろう」

 宗介は紅の言葉をさえぎって、強い口調でそう言った。紅を怒鳴りつけるなんて、もしかしたら初めてかも知れなかった。
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