婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「なんだ、莉子といたのか」
「ええ。そんな顔しなくても、別に取って食べやしないわよ。ぜひ、お式には呼んでねって、そう話していただけ。 ほら、おばさんが呼んでるわよ」

 莉子との話はそこで終わった。なんの力にもなれなかったけれど、莉子が本心を打ち明けてくれたことを紅は嬉しく思った。

 引っ越しを済ませたばかりの新居に戻った後で、宗介が紅に言った。

「あのさ、別に莉子は無理に呼ばなくてもいいから。嫌がらせみたいなつもりで言ったんだろうし」
「嫌がらせでもなんでも、莉子さんにも来て欲しいな」

 いつかはきっと、彼女と仲良くなれる。そんな予感がした。その頃には彼女にも新しい恋が訪れているだろうか。それとも、彼を追いかけてアフリカに飛んでいる? どちらにしても、莉子が幸せであることを紅は願った。
 親友といい、莉子といい、紅はどうも、強くてかわいい女を嫌いになれないらしい。


















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