婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
エピローグ そして、約束の日
 半年後。よく晴れた春の日に、紅と宗介は結婚式を挙げた。念願だった白無垢を着ての神前式だった。厳かな空気と家族の優しい眼差し。そして、幸せそうな彼の笑顔を、紅は生涯忘れることはないだろう。

 式の後はレストランに場所を移して、盛大な披露宴だ。乾杯が終わると、すぐに高砂席まで駆けてきてくれたのは玲子だった。

「紅~。おめでとう! ドレス、似合うよ。すっごく素敵!」
「ありがとう、玲子」

 ウェディングドレスは王道のビスチェタイプを選んだ。軽やかにふわりと広がるAラインがかわいらしい、お気に入りの一着だった。長い髪はシンプルなシニヨンにまとめ、京香にもらった真珠のピアスが美しく映えるようにした。隣の宗介は、ライトグレーのタキシードだ。神社での紋付袴姿も凛々しくて素敵だったけれど、本場英国の血をひいているだけあって、やはりタキシードがしっくりとよく似あう。うっかり見惚れてしまって、乾杯のタイミングが遅れてしまったくらいだ。

「お色直しもするんでしょ?」
「うん。今時ないくらいの派手婚でちょっと恥ずかしいんだけど……」
「全然いいじゃない! 一生に一度のことだもん。何回でも着替えなさいよ~」
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