婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
婚約破棄へのステップ3
 紅の話を聞き終えた玲子は「なるほどね〜」と大きくうなずいた。
 
「突然のランチのお誘いの理由はそういうわけか」
「玲子以外に相談できる人、思いつかなくて。私、どうしたらいいと思う!?」

 土曜日だというのに宗介は朝から会社に行っている。紅はすぐに玲子に電話し、彼女を呼び出した。
 フォトジェニックなサンドイッチをウリにしているカフェは、ほぼ満席に近い賑わいを見せていた。
 大きなガラス窓からは柔らかな陽光が差し込み、イケメンな店員さんが運んできてくれたバジルとサーモンのサンドイッチはとても美味しそう。だけど、今の紅にはそれらを楽しむ余裕は皆無だった。

「悩むくらいなら、なんで家に来ない?なんて誘ったのよ」

 玲子は呆れ顔で至極もっともな意見を述べた。
 それについては、紅も大いに反省している。安易な発言だったことは認めざるをえない。

「宗くんには本当に色々とお世話になってたから、困ってるなら力になりたいと思って……」
「でも婚約破棄はしたいんでしょ? 言ってることとやってること、めちゃくちゃじゃない?」

 玲子はとことん辛辣だ。が、彼女の言う通りでもあった。紅自身、自分が彼との関係をどうしていきたいのか……よくわからなくなっていた。
 縁を切りたいわけじゃないけれど、友達というのもなにかしっくりこない。
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