こいつ、俺の嫁。ーAnother my wife storyー
言いたいことだけ言って、わき目もふらずに走った。
彼の努力はずっと見てきたつもりだ。
高校の時からずっと。
テツさんや他の選手に少しでもいいトスを上げようと努力していたこと、頑張りすぎて怪我をして試合に出れずに1人泣いているとこだって見てきた。
周りにはああやって何ともないように明るくふるまっているけど、人一倍頑張っているのを私は知ってる。
だからあの女の人の言葉を聞いてついカッとなってしまった。
息が続かず近くの公園のベンチに座る。
乱れた息を整えると次第に頭も冷静になっていく。
"今までたいした努力もしてこなかったような奴がバレーを、こいつの努力を馬鹿にするな!!"
「…私、すごいこと言っちゃった気がする……」
あいつの家族でも何でもないし、あの女の人のこと何も知らないくせにすごい生意気なことを言ってしまった。
しかも言いたいこと言うだけ言って走り去ってるし。