君といた夏を忘れない〜冷徹専務の溺愛〜
3 きみだけを side遼一
 2年ぶりの日本。
 久々に会った彼女は、相変わらず小動物のように愛らしく、驚いた顔も記憶のままだった。2年の月日が流れただなんて信じられない程だ。だがその事実が妙に癪に障った。

 彼女にコーヒーを淹れてもらい、二人きりになったタイミングで、あくまで冷静に聞いてみるつもりだった。
 だが、あまりにも彼女が俺に無頓着な様子なのが、気に食わなかった。開き直ってみせてもよかったのだ。久々に俺を見て、動揺してほしかった。
 言い訳に過ぎないが、それで感情的に質問攻めにしてしまった。そして、気づいたときには彼女が崩れ落ちていた。意識を失ったようだった。

「楓?」

 咄嗟に抱き止めたが、反応がない。

「……楓? ……楓?! ──かえでっ!!」

 意識を失っている彼女を目の当たりにして、血の気が引いていく。
 そこへノックもせず中川と高林が入ってきた。

「どうしたの?! ……っ!! 相沢さん!!」

 そして、楓のかかりつけ医に連絡し、救急車で搬送することに。早朝だったこともあり、会社はそこまでの騒ぎにはならなかったが、噂は立つかもしれない。事情を知っているのか、秘書室にいた女性が救急隊が到着した際に上手く立ち回ってくれたようだった。
 以前にもこうして倒れたことがあり、その時は大事には至らなかったようだ。

 そして、俺は、彼女の秘密を知ることになる。
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