【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~

「あ、もう一つ言い忘れてた。」

「何ですか?もぉー…」

思い出した様に顔を上げた朔夜さんは、首を傾げる私に向かって柔らかい笑みを揺らす。
耳元まで口を持っていって、囁くように言ったんだ。 ’愛しているよ’――と。



’お兄ちゃーん’

知らない場所。異国の言葉が飛び交う中で、確かに聴こえた気がした。
ふと足を止めて振り返ったら
そこには歳の少し離れた兄と妹が居た。


まるで懐かしい映像の様に目の前を広がって行く――

ぼやけていた視界の中で、大きな屋敷の庭先で花を集めている男の子と、それについていく小さな女の子。

シロツメクサで作った花の冠を、その男の子は優しく小さな女の子の頭へとそっと被せた。 柔らかい微笑みを落としながら。 女の子も顔をくしゃくしゃにさせながら笑っている。

しあわせ その響きが相応しいその光景は目の前をかすめながら、やがて消えていく。

それはただの願望だったのか、異国の地で私に見せた夢幻だったのか。 そんなのはどちらでも良い。



笑っていたんだ――確かに。



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