【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~

その頃俺は、確か10歳位だと思う。

6歳の頃父親が蒸発した。 そしてその後直ぐに母は自殺した。 のちにこの横屋敷の館に引き取られる形になる。

父親が他の女性と逃げたと知ったのは、後からだった。 そのすぐ後に事故で呆気なく死んでしまったのも。

父に裏切られた母は自殺をした。その第一発見者は俺だった。


生涯俺は、自分の父を許さないと心に誓った。 そして、父と逃げた女性の事も。


庭に居た少女はまだ3、4歳位だったかと思う。

よくよく見ていれば、白いワンピースは所々汚れていて、履いている靴も泥水がかかっていてくすんでいた。

みすぼらしい少女の大きな瞳がジッと自分を見据えた。

「こんにちは。」

そう声を掛けてもどこか戸惑っているようで、持っていたシロツメクサを悪戯に指で弄っていた。

そして俺の言葉を無視したまま、シロツメクサを掻き分けながら両手を汚し何かを探している様だった。

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