【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「どうしたの?」
再び声を掛けると、顔を上げて黒い瞳でこちらをジッと見つめた。
そして消え入りそうな小さな声で言ったのだ。
「四葉のクローバーをさがしているの」
「四葉のクローバー?」
「でも三つ葉ばっかりしか見つからないの」
「四葉のクローバーは中々見つけられないよ」
その場でしゃがみこんで、少女と共に四葉のクローバーを探す。
「どうして四葉のクローバーが欲しいの?」
「四葉のクローバーを見つけたら、しあわせになれるんだって。
おかあさんにあげたいの。 おかあさん、全然わらってくれないから。」
年の割には少しだけ大人びていて、しっかりとした口調だった。
泥だらけになりながら、全然笑わないという母親の為に四葉を探しているなんて、健気な話ではないか。
だけど俺はもうとっくに知っていた。 四葉のクローバーに人を幸せにする効力なんてないという事を。 少女の母親が、四葉のクローバーを手にした所で、彼女に笑いかけてくれない事も。