【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「趣味の悪い水槽だ。」
「そうですか?素敵だと思いますけど」
「こうやって魚を飼って水槽に閉じ込めるように女を閉じ込めるような男だ」
水槽のブルーライトに照らされて、朔夜さんの瞳は不思議な色に変化していく。
「それって…智樹さんの事ですか?」
私の言葉に朔夜さんは皮肉めいた笑みを浮かべた。
「あの男の優しさは信じない方がいい。
お前みたいな孤独で人に縁のないような女につけこむのは大得意だろうからな。」
「そんな言い方…兄弟なんでしょう?」
「兄弟つっても血は繋がってねぇよ。
どれだけ上品ぶってよーが俺もあいつもろくでもない親に捨てられた人間に違いはない。
横屋敷の家で不自由ない教育を受けてきたって、生まれは隠せない。 俺もあいつも卑しい人間だって事は忘れるな」
冷たい瞳だった。 けれどその冷たい瞳には僅かに悲しみが灯る。
「それって自分自身も否定しているって事?」
その問いに返答はなかった。 代わりに朔夜さんは水槽に手をつけて私を追いやった。
…やっぱりこの人、怖い。
下を向いたまま息を止める。彼のつけている甘ったるいホワイトムスクの香水が鼻を掠めていく。