【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「誰も彼もじいさんの遺産や横屋敷グループを手に入れたがっている。
お前に親切にするのは、お前を大切に想っているからじゃない。お前が正当な後継者であるからだ。」
じりじりと追い詰められていく。 その手を振りほどけなかった。
水槽を叩く大きな音が鳴り身をひそめる。 閉じた目をゆっくり開けると目の前には美しい不思議な瞳。
光りの角度によってはヘーゼルやイエローにも見えるが、深く深い場所ではグリーンに見える。 吸い込まれそうな程、綺麗な瞳だ。
「特にあの男は欲深い男だ。 何をしてでも横屋敷家の全てを手に入れるだろう。
その上でお前は邪魔で仕方がない存在の筈だ。
一つだけ忠告しておく。 横屋敷智樹だけは信じるな」
余りの気迫に足元がカタカタと震えた。
パッと手を離すと直ぐに後ろを向いた。
パーマのかかった髪がふわりと揺れる。
「それはッ…それはあなただって同じじゃないですか?!
朔夜さんにとっても私は邪魔な存在ですよね?!」
どこかに深く眠っていた激情がこみ上げるのは、きっとあの強い瞳のせい。
「別に俺は…横屋敷の地位や金になんか興味ねぇよ…」
酷く落胆しているような声にも聞こえた。背を向けているから表情までは分からない。