転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 考えてみるけれど、去年は父の腕の中から出なかった気がする。
公爵家の子供達が、街中をふらふらする機会なんてそうそうあるはずもない。屋敷の門から出た瞬間、あまりの人の多さにびっくりしていたような。

「お父様、早く早く!」

 待ちきれない様子で足を踏み鳴らすと、父は蕩けそうな顔になった。

「もうちょっとお待ち」
「はぁい」

 駄々をこねてもしかたないので、おとなしく父の腕におさまる。
 母も今日は祭りの日のために仕立てた外出用ドレスを着ていてとても綺麗だ。
祭りの日、一回だけのために仕立てられたドレスは、普段身に着けているものより細身の仕立てだ。コルセットで締め付けなくても、ほっそり見えるよう工夫されている。
アクセサリーは最小限。もともとものすごい美女だから、余計なアクセサリーなど必要ない。
 兄達も、動きやすい服装だ。家族そろって出かけることもまた珍しい。
 興奮を抑えられずに、アイリーシャは父の腕の中でそわそわと視線を走らせた。

「リーシャは去年、固まっていたな」

 長兄のルジェクが、こちらを見てにやにやしている。アイリーシャは、むっとした顔になった。

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