転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「固まってませんー!」
「しかたないよ、去年は赤ちゃんだったんだから」

 次兄のノルベルトはたぶん、救いの手を差し伸べてくれているつもりなのだ。
 けれど、全然救われた気にならない。去年は、四歳の誕生日を迎えたところ。赤ちゃんというには大きかったはずだ。
 本当なら座席に座らないといけないのだろうが、父がアイリーシャを離そうとしなかったので、ちゃっかり膝の上に乗ったまま。
 馬車の窓から見える景色に、アイリーシャの視線は一気に釘付けになり、機嫌も急上昇した。

「……わあ、すごい!」

街中を行く人々は、皆どこかにラベンダー色を身に着けている。たとえば、ブラウスだったり、上着のポケットに差し込んだハンカチだったり。
中には上から下までラベンダー一色の人もいる。そして、街中に漂う香りもいつもとは違っていた。

「……全部、同じ色ね」
「ええ、そうね。お母様もそうでしょう?」

 母は、ドレスの襟がラベンダー色だ。美人は何を身に着けても美人なのだなぁとうっとりしていると、父が母の頬にキスをする。
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