転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 ちらり、と兄達の方を見やれば、全員そろって絶妙に視線をそらしていた。どうやら、こういう場合は見て見ぬふりをするものだと意見が一致しているらしい。

「……お菓子、買っていい?」

 兄達は、やはり食い気の方が先に来るらしい。ラベンダーを使ったスイーツも、街の屋台に並んでいるそうだ。
 あっという間に街の中心部に到着し、一行は馬車を降りた。

「はぐれちゃだめよ、ついてらっしゃい」

 母が三人の兄達を整列させ、護衛達は遠巻きに見守る。父も母も最低限身は守れるし、問題はない。
祭りを楽しんでいる人達の邪魔にならないよう、護衛達は少し離れたところから警護するのが習わしなのだそうだ。

(……神様、今日はついてこなかったのよね)

 アイリーシャに"隠密"を指導してくれている神様は、気まぐれにふらりと現れる。神様が来ない時は自主訓練だ。

「お母様、あれ、欲しい!」

 商店街の商店も、祭りの時期にはラベンダー色の商品を多く扱っている。アイリーシャが指差したのは、白いリボンと布製のラベンダーでできている髪飾りだった。
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