転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
もっと上達していれば、多少物音を立てても大丈夫だったろうがしかたない。男の脇をすり抜け、隣の部屋へと出る。
「……いない。逃げた!」
隣の部屋には、三人の男がいたけれど、彼らも皆アイリーシャ達が目に留まらないようで、どうしたどうしたと部屋の中をうろうろとしている。
アイリーシャと手を繋いでいる男の子だけが、姿を見ることができる。アイリーシャは、彼に向かって「しぃっ」と人差し指を唇に当てた。
三人とも外に通じる扉から離れたら、一気にその扉を開いて外に出る。外階段を駆け下りる間ぐらいは追いつかれないですむだろう。
(……よし)
部屋に残っていた三人のうち、二人が閉じ込められていた部屋をのぞきこんでいる。もう一人の注意もそちらに向いた。
逃げるなら今だ。
――けれど。
「あいたっ!」
声を上げたのは男の子だった。テーブルに足をぶつけたらしい。ぶつけた時の音も部屋中に響いた。
とたん、二人にかけていたスキルが解けてしまう。
「――いたぞ!」
「いつの間に」
今ので一気に気づかれてしまった。男達が、一気に二人の方へ押し寄せてくる。