転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 父の胸にもう一度顔を埋める。背中に回された腕に安堵したけれど、嫌な予感しかしなかった。

 アイリーシャが王宮に呼び出されたのは、事件から十日ほどが過ぎた後のことだった。

(……ちょっとじゃなくて、だいぶ失敗だったわよね……!)

 誘拐現場から逃げ出すだけのつもりが、王宮に呼び出しをくらうほどの大ごとになってしまった。
 可愛らしいピンクのドレスを着せられ、王宮に赴く馬車の中、両親に挟まれて座りながら考え込む。

(まさか、要注意人物としてどこかに監禁される……とか?)

 あの時、ミカルはアイリーシャの魔力を鑑定したのち、血相を変えて立ち去った。
けれど、あの時、他にどう言えばよかったのだろう。十日の間、考える時間だけはたっぷりあったけれど、今後の方針を決めることもできないままだった。
両親も何も教えてくれなかったから、アイリーシャの不安は膨れ上がる一方だ。
 馬車を停めると、そこにはすでに案内役の侍従が待っていた。

「……お父様」

 不安になって、ぎゅっと父の服を掴む。
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