私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
春乃の主張に驚いた。
彼女は真面目な性格で、私のように授業中に寝ることはないし、毎日寄り道もせず帰宅する。
「え?春乃は家に帰った方が……」
「撫子が真っ直ぐ帰るなら私も帰るわ」
天使のようににっこり微笑む彼女を見て苦笑いした。
さすが兄の選んだ婚約者。
普通の人間だけど、なかなかいい性格をしている。
春乃は見た目に反して頑固で肝も据わっているのだ。学校を出ると、ふたりで歩いて近くの甘味処に向かう。
ここは大通りでいつもならもっと人出が多いはずなのに、今日はまばら。
やはり神隠し事件の影響だろうか。
そんなことを考えていたら、目の前で猫が車に跳ねられた。
春乃は「キャッ!」と叫んで目を瞑るが、私はその猫近づいた。
体長は一尺くらい。
頬に古い傷があり、茶色い毛並みで、腹部から出血している。
「ひどい……」
そう呟きながら、その猫に触れた。
目を閉じて苦しそうに息をしている。
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