私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「俺に感謝しろよ。やっと永遠の眠りにつけるんだ」
冷たく言うが、俺の中の怒りは消えない。
妖なんかが存在するから撫子が危ない目に遭う。
いや、妖だけではない。
煌の封印を解いた人間も許せない。
邪悪なものは全て滅びてしまえばいい。
全て……。
そうだ、尊。
全てを滅ぼせ。
闇の声が聞こえる。
怒りの炎で全部滅びろ。
自分の力を全て解放する。
全部なくなればいいと思った。
だが、よく知った手が俺を抱きしめる。
「尊……目を覚まして。このままでは……世界が壊れちゃう」
撫子の声がしてハッと我に返った。
「撫子……?」
俺を守るように抱きしめる彼女を呆然と見つめる。
撫子と目が合った瞬間、彼女の手から力が抜けてそのまま大理石の床に倒れ込む。
「撫子!」
慌てて彼女の身体を抱き上げるが、返事をしない。
絶望と恐怖が俺を襲う。
落ち着け。
ここで取り乱したら俺は彼女を失う。
治癒を施そうとしたら、次頭に隼人、飛ばされたはずの琥珀も戻ってきて、俺たちの元に駆け寄り彼女の顔を覗き込んだ。
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