私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
「撫子さんは?」
「お嬢ちゃんは?」
「姉ちゃん大丈夫?」
三人に問われ、じっと撫子を見つめながら告げた。
「今……息をしていない」
俺の言葉にふたりとも黙り込む。
もう治癒の術だけでは彼女を助けられない。
だが、焦るな。
過去の記憶を呼び覚こせ。
撫子が雀を蘇らせた時の記憶を……。
あの時、彼女は『生き返らせてあげるね』と手の中にいる雀にそう言って目を閉じた。
精神を集中させて念じるんだ。
自分の命を彼女に与えるように……。
少し青くなったその唇に口付けて、念じる。
こっちに戻って来い。
まだ死ぬには早い。
頼むから戻って来てくれ。
どれくらいそうしていただろう。
彼女が六歳の頃からずっとそばで見守ってきた。
今までの彼女との大事な思い出が頭の中を駆け巡る。
『尊』と彼女に何度呼ばれただろう。
だが、彼女が俺と出会った時は、まだ名前では呼んでくれなかった。
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