私の執事には謎が多すぎる ー 其の一 妖の獲物になりました
一年の昏睡状態から目覚めて、いつの間にか家族になった俺を見て遠慮がちに『お兄さん』と呼んでいたっけ。
それが『尊お兄ちゃん』に変わり、俺が彼女の執事になると偉そうに『尊』と呼ぶようになった。
でも、呼び捨てにされるのは嫌ではない。
俺に心を許している証拠。
それに、これまでの俺たちの歩みの歴史。
撫子の胸の傷が治り、彼女がゆっくりと目を開けた。
「……み……こ……と」
弱々しい声だったが、確かに彼女は俺の名を呼んだ。
周りにいるみんなも息を吹き返した彼女を見て涙ぐむ。
「お帰り、撫子。もう勝手にひとりで旅に出るなよ」
俺もうっすら涙を浮かべてそう告げれば、彼女は小さく微笑んだ。
「ごめん」
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