耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
後ろで怜が小さく息をのむ音が聞こえた。

「私で出来ることがあるなら言ってほしい。好きな人の望みを叶えたい、喜ばせたいって思ってるのは、れいちゃんだけじゃないんだよ」

美寧ははっきりとそう言い切った。

返事はない。その代わりにお腹に回る腕にきついくらいに力が込められた。その腕を両手でそっと握る。

しばらく黙っていた怜は、詰めていた息を吐き出すように長い息をついた。
美寧の肩に乗せられていた怜の額が持ち上がる。

「敵いませんね、ミネには———」

「れいちゃん……」

「あなたが言った通りです。ミネ」

「じゃあ!」

言って欲しい。自分にも怜を喜ばせることが出来る何かがあるのなら———

飛びつくような声を上げ振り向こうとした美寧を、きつく巻き付いた怜の腕が阻んだ。

「あなたを困らせたくないのです。泣かせたくない……」

苦悩するように吐き出された言葉に、美寧は眉を寄せる。

怜が望んでいることを叶える為に、自分は困ったり悲しんだりするのだろうか。怜が美寧にそんなことを望むようにはどうしても思えない。けれどそれならどうしてそんな風に悩むのだろう。

美寧に出来ることなんて微々たるものだ。料理だってまだまだ一人では無理だし、掃除も洗濯も言われたことしか出来ない。
けれど少しずつ努力して出来るようになったこともある。
美寧が頑張って怜が喜んでくれることがあるのなら、その為の努力を惜しんだりはしない。

「私じゃ力不足なこともあるかもしれないけど、出来るだけ頑張るから。だかられいちゃんもたまには甘えて欲しいよ……」

「ミネ………」

美寧の名前を呟いたきり、また黙ってしまった怜に美寧は少し落ち込んでしまう。

「……ごめんね。私が頼りないからだよね……いつまでもこどもっぽいから。だかられいちゃんも私に頼れないんだよね……?神谷さんにも年下に思われるくらいだし……」

「今はその名前は聞きたくありません———」

怜の腕がゆるんだかと思ったら、突然ぐいっと体の向きを変えられた。
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