耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「にゃっ、」
それが怜の唇だと気付いた美寧の顔が、みるみる赤くなっていく。
挨拶のキスにはそんなに動揺しなくなってきたが、こういう不意打ちのキスには弱い。
心の準備が出来ていないと、動揺と恥ずかしさで真っ赤になってしまう。
真っ赤な顔で固まっていると、後ろからぎゅっと強く抱きしめられた。
美寧の肩に額をつけた怜が「はぁ~」と長い息を吐く。その吐息と柔らかな毛先の両方に首元をくすぐられて、美寧は思わず肩を竦めた。
「………れいちゃん?」
何も言わずただ強く抱きしめるだけの怜を呼ぶと、彼は返事の代わりにもう一度軽く息を吐く。そして掠れた声が小さく呟いた。
「ずいぶん欲張りになったな……」
「え、」
(『欲張り』って?……もしかして私、何かおねだりするみたいになってた!?)
「あの、ちがう、」
焦って釈明しようとした美寧の言葉よりも、怜の方が早かった。
「俺は自分がこんなに欲張りだなんて知らなかった………」
「え?」
「俺が選んだものをあなたに身に着けてもらう。それだけで十分だと……そう思っていた………」
背中伝いに聞こえてくる声が低く掠れている。それは美寧に、というよりも、自分自身に聞かせているようで———
「ミネの喜ぶ顔が見れるだけでいい。そう思っていたくせに………」
怜は何を望んでいるのだろう。
『喜ぶ顔が見れるだけでいいと思っていた』
『思っていた』ということは、今はそれだけでは駄目だということ。
彼が望むことがあるとしたら、それを叶えたい。それが自分に出来ることならなおさらだ。
美寧は振り向かず、前を見たまま口を開いた。
「いいんだよ。れいちゃん」
静かに言うその声は、まるでリンと鳴る鈴の音のようで———
「れいちゃんが望むものがあるなら、それを口に出してもいいの。それは欲張りでも我がままでもないんだよ」