耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
そんなことを考えながら窓ガラスの向こう側の庭を見つめていると、腕の中の美寧がもぞもぞと動いた。見ると彼女の手が首元に触れていて、怜の目元が自然とゆるんでしまう。

「気に入ってもらえて嬉しいです」

ネックレスを買った時にした約束を守ってくれていることに礼を言うと、美寧は『ありがとうは自分の方だ』と言う。
その真剣な表情が可愛らしくて、目元だけでなく口元もほころぶ。振り向いてじっと見上げてくる仕草が可愛くて、耐えきれずに一瞬だけ唇を重ねた。

みるみる真っ赤になっていく彼女に、体の底から愛しさが沸き上がる。
それと同時に体の底から"別の情"もじわりと滲み出てきた。

細い体に巻き付けた腕にぎゅっと力を込め、その小さな肩に額を付けてやり場のない想いを溜め息に込める。

(そばで笑顔を見られたら、それで十分だと思っていたはずなのに、)

「ずいぶん欲張りになったな……」

思わず口から言葉が漏れた。

美寧が戸惑っている気配を感じつつも、一度口を開けば想いがぽろぽろと言葉になってこぼれ出してしまう。

「俺が選んだものをあなたに身に着けてもらう。それだけで十分だと……そう思っていた………ミネの喜ぶ顔が見れるだけでいい。そう思っていたくせに………」

自分は一体何を言っているのだろう。そんなこと彼女に言っても仕方ないのに。
そう、怜が苦いものを噛んだような気持ちになった時、リンと鳴る鈴の音のような声がした。

「いいんだよ。れいちゃん」

一拍置いてその声は言う。

「れいちゃんが望むものがあるなら、それを口に出してもいいの。それは欲張りでも我がままでもないんだよ」

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