耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「私で出来ることがあるなら言ってほしい。好きな人の望みを叶えたい、喜ばせたいって思ってるのは、れいちゃんだけじゃないんだよ」

ハッとした。
美寧は美寧なりに怜の葛藤に気付いているのかもしれない。
彼女は決して人の気持ちに鈍い方ではない。むしろ鋭い方だと思う。
実際、幼い頃から大人に囲まれた環境で過ごしてきた美寧は、周りの人の気持ちを察する機微に()けていた。


「敵いませんね、ミネには———」

怜が降参するようにそう言うと、美寧が「じゃあ!」と怜を促す。
けれど、何を言うというのだろうか。自分でもどうしたいのかはっきりと分かっていないというのに。
ただ一つ決まっていることは、『ミネの笑顔を守りたい』ということだけ。

「困らせたくない、泣かせたくない」と言う怜に、美寧は「甘えて欲しい」と言う。

なんと言えば彼女が納得してくれるのか。言葉を探して口を閉ざした怜。そんな彼に美寧は寂しそうに言った。

「……ごめんね。私が頼りないからだよね……いつまでもこどもっぽいから。だかられいちゃんも私に頼れないんだよね……神谷さんにも年下に見られるくらいだし……」

耳に入ってきた名前に、自分でも驚くほど低い声が出た。

「今はその名前は聞きたくありません———」

ほとんど反射のように彼女の体の向きを変えて抱え直し、その口を塞いだ。
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